Special Figures
 スペシャルフィギュアというのは特に複雑な模様の図形(フィギュア)のことをさすのであり、優雅な姿勢や動作で気持ち良く滑るのはまた別の問題である。
氷上に正確なトレースを描くのが最大要件でその図形の難しいことと形が独創的なことがよい姿勢云々よりも重要視されるのである。
 スペシャルフィギュアは自分で複雑奇抜な図形を考案して滑るもので、もちろん図形全体を一度蹴り出しただけで片足で滑り描くのである。基準コンパルソリーなどはスペシャルフィギュアを考案する材料となる。したがってスペシャルフィギュアに関しては基準コンパルソリーに精通することがフリースケーティングよりも大切なことである。
 このスペシャルフィギュアが大会に現れたのは1909年ボヤリノフ氏が企画した、ウィボルグで開かれた競技会であった。この大会での種目はスペシャルフィギュアとフリースケーティングの2種であったという。つまり今までの基準コンパルソリーにスペシャルフィギュアがとって代わった感じだ。なお優勝したのはロシアのオルロウ氏である。
 ところが基準コンパルソリーの試合をスペシャルフィギュアで置き換えるのは妙な結果となるのだ。基準コンパルソリーの試合は、競技開始の1か月前くらいまでは17種類のうちどれをやるのか公表されないのですべてにおいて練習を積んでおかなければならない。ところがスペシャルフィギュアは自分で考えて滑るからおろそかになりがちなものもある。これでは本末転倒であろう。

ちなみにスペシャルフィギュアは何をもって採点するか、それは次の4つである
(1)難易度(2)斬新さ奇抜さ(3)清楚(4)滑る態度

さて、下図で示したものはほんの一部でbはサルコウ氏のフィギュア(考案はエンゲルマン氏)。
これでサルコウ氏が皆に驚かれたのは非常に大きく滑ったからである。ループの長さは約40cm、イロの長さ1.5m、したがって全体はなかなか大きなものになる。このように複雑なフィギュアを一蹴りで大きく滑るのは至難のことと言わなければならない。 cに示しているのはパニン氏のフィギュアである。サルコウ氏を超える理由は彼の氷上に描いたフィギュアが数学的に正確だからである。

出展: 氷滑 河久保子朗著 大正6




なお上の図での上段はスペシャルフィギュアの基礎図形である
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